ウェイン・ワンダーに、私はなりたい。Part.2

  • 2013/06/25(火) 22:10:54

(この記事は二部構成です。ここから入った人は、こちらを先に読んでくださいませ)

 メンツがメンツだけに、BB Kingsはパンパン。NYのレゲエ関係者で、ふたつしかない楽屋とステージ周りの廊下も人でいっぱい。ラジオ局のイベントらしく、飲み物や食べ物もちゃんと用意されていたので「食べ物ありましたねー」とレイヴォンに言ったら、「ステージに上がる前ギリギリだと気持ち悪くなるから、あれでよかったの」と言ったそばから、ヘネシーを注いでいたのがおもしろかった(おまけに、私にも作ってくれました。いい人だ)。

 ジャマイカでも何度か見たNature(ネーチャー)がトップバッター。次がいきなりRaunch Ent.チーム、フォックス、レイヴォン、シャギー。ここでも慌てず騒がず、順番を言われて「分かった」と答えただけだったのがウェイン。こういうイベントやコンサートでは、順番で揉めがち。早すぎると格下みたいで嫌がるし、お客さんが疲れているトリも人によっては避けたがる。アメリカやジャマイカのダンスで、バンドやセレクターは準備ばっちりなのに、妙な間があったら、まずは順番で揉めてると思ってください。

 前売りが35ドル、当日券はもうちょっと高かったのかな。モーガン・ヘリテッジ欠席を埋めるためか、ホストのシャギーが最初のショーより2曲くらい多くやっていました。次がウェイン。観光客も来る会場なので、アメリカでも売れた“No Letting Go”の盛り上がり方がスゴかったです。

    

 ステージにVPのニールたちが来たなー、と思ったら、いきなりジプシャンの登場。8月にアルバムが出るので、そのプロモを兼ねて。相変わらずの不思議君ヴァイブで、ジャマイカ人らしいダサかっこいい着こなしもナイス。最後がヴェガスだったけれど、彼は全く同じことをする人だし、裏でいいショットも撮れたし(Woofin’楽しみにしててくださーい)しで、早めに出るウェイン一行と帰ることに。

    

 駐車場に着くまでも何回かファンに止められて、そのたびに柔やかにポーズを取るウェインさん。プロ。車中も静か。ブライアンがウェインのダブや未発表曲をかけて、みんなで「いいねー」とか盛り上がる感じ。聞いたら、ウェインさんは7時起床でジャマイカを発って、ホテルで身支度だけ整えて、会場に向かったとか。疲れていても、文句や愚痴は一切出ない。

 受け身でおとなしいだけでは、ないです。そうだったら、アーティストは務まらない。ウェインさんは、筋は通っている。私なりに控えめに質問したときのこと。「そう言えば、ソカの曲ってなかったですね」と尋ねたら、「別に嫌いじゃないけど、自分のスタイルじゃないし、やる必要はない」とキッパリ。これ、ジャマイカのダンスホール・アーティストでは珍しい。カーニヴァル中心に一年の暦が回る、ジャマイカ以外のウェスト・インディーズの島々では「国の音楽」はソカ。ソカのヒット曲があると、NYやマイアミを含めてカーニヴァル期間中のコンサートに呼ばれやすくなるので、ジャマイカのアーティストはストレートなソカ・チューンや、はたまたソカ・ミックスを作ります。そこを放棄しているって、凛としています。

 凛としていると言えば、カヴァー曲。

 ウェイン・ワンダーは、カヴァー曲で出て来た人です。 トレイシー・チャップマン の“Fast Car”やバングルズの“ Eternal Flame”が大当たりして、ブジュ・バンタンとともに、ペントハウス全盛期を盛り上げました。 90年代の彼を知っている人なら、覚えいていますよね。 それが、だんだんカヴァー曲の率が減ったので、その理由を2003年の“No Letting Go”aka ディワリ・ブームの時期に取材した際に尋ねると、「オリジナル曲で勝負したいから、意図的にやっていない」という答え。彼みたいな美声シンガーは、たまにはR&Bのカヴァーを歌ってほしいなぁ、というのが私を含むファンの本音でしょう。でも、本人が歌いたくないなら仕方ない、と、この話題は封印していたのですが、な・ん・と、車中でかかったんです。リチャード・マークス“Right Here Waiting”のカヴァー。うわー、懐かしー、ペントハウスだよねーっと思いつつ、トラックが違う気が。声も若くないし、新しく歌い直したものらしい。


 
 これが、とてもいいのです。原曲はべったべたで甘々なバラッド。レゲエ向き。これまたあまーいウェインの歌声が、「コンピュータライズド」と表現した方がいい懐かしめのトラックに乗っているのです。90's好きな人と一緒に盛り上がりたいタイプ。

 一周してカヴァーを歌わない、という姿勢を崩したのかな、と思ったら、「昔の曲のやり直しだから」という特例で、やはり基本的にはやらないそうです(残念……)。ちなみに、この“Flash Back(Right Here)”のプロデューサーはマッド・スパイダーakaポイズン・ダートのタランチュラakaタラちゃん。ウェインもフロリダ在住なので、仲がいいんでしょうね。

 表題の件。私は、ウェイン・ワンダーみたいな人に対して、コンプレックスを感じるのです。イケイケな人や、目立つ人はそれだけリスクを負っているのを知っているし、仕事やお金、美貌に恵まれている人も、それらが“comes around, goes around”だと分かっているので、自分と引き比べません。でも、静かで騒ぎを起こさず、自分自身と現状につねに満足していそうなウェイン・ワンダーみたいな人は、羨望というより、あこがれを感じます。私はすぐ騒いじゃうし、感情の起伏も激しいし、そのせいで要らないドラマを引き寄せるし。

 正確に書くと、「ウェイン・ワンダーみたいな人に、私はなりたい」のです。

 昨年に出た年ぶりのアルバム『My Way』は
こちら。やっぱり「我が道」を行くんですねー。日本ではロッカーズ・アイランドのレーベルからの配給。ミッドテンポのR&Bマナーの曲が目立ち、もうちょっとレゲエが強くてもいいかな、と初めは思いましたが、聴いているうちに自分の中で「育って」きて、ここのところヘヴィロテです。アルバムで聴いて欲しいですが、DLするならワン・ドロップの“This Time”と、「これキライな女の人はいないね」なR&Bのマイアをフィーチャーした“If I Ever”かな。

 二部構成にしたのがムダだったくらい、長くなってしまいました。
 
 最後まで読んでくれて、本当にありがとー